いつも原酒造の日本酒をご愛顧いただき有難うございます。
年にいくつかある酒蔵の重要行事の中に「呑切り(のみきり)」というものがあります。
「呑切り」の呑(のみ)というのは日本酒の貯蔵タンク下部にある小さな栓部分の名称「呑口(のみくち)」のことを指します。こちらを切る=開栓する、という意味で「呑切り」と呼ばれます。
この行事が持つ重要な役割のひとつに、貯蔵した日本酒に異常がないかを確認することが挙げられます。通常、呑切りは気温が高くなってくる6月・7月ごろに行われるのが一般的ですが、それは代表的なお酒の異常である「火落ち」などが気温が上昇してくる時期に現れやすいためです。
大切に育ててきたお酒がタンクの中で異常を起こしていないか、慎重なチェックが行われます。
7月28日、原酒造では2022年の初呑切り(のみきり)を行いました。
こちらは和醸蔵(わじょうぐら)貯蔵庫に並ぶタンクの様子。呑口が切られるのを静かに待っています。
現在、原酒造の「越の誉」「銀の翼」は和醸蔵・清澄蔵(せいちょうぐら)に主に貯蔵されています。特に和醸蔵の貯蔵庫は土蔵造りと空調により夏でも一定の温度に保たれる理想的な環境です。
朝、蔵に集まった蔵人たちが慎重に呑口を切っていきます。
原酒造が誇る8年熟成の秘蔵古酒「もろはく」の呑切りの様子。山吹色のお酒が瓶の中に注がれ始めるとともに、蔵の中に複雑で豊潤な熟成酒の香りが漂います。
数十に及ぶタンク一本一本から慎重に少量の日本酒を汲みとっていきます。
タンクの中に眠っていたお酒と蔵人が久々の対面を果たす瞬間です。
全ての開栓が終わり、お酒の用意ができたところで蔵人は和醸蔵を出て、直売店の酒彩館に移動します。
酒彩館の多目的ホールにて唎酒(ききしゅ)が行われます。
ひとつひとつのお酒の味や香りを丁寧にチェックし、どんな仕上がりになっているか、異常がないかを確認していきます。唎酒は五感を研ぎ澄ませて行うため、余計な音を出したりするのはご法度です。
厳かな雰囲気の中、蔵人たちは唎酒を進めていきます。
※新型コロナウイルスの世界的流行以降、原酒造では感染対策の観点よりスポイトと使い捨てカップを用いた唎酒を行っています。
全員が唎酒を終え、それぞれの講評を行って呑切りは終了となります。
2022年 初呑切りの結果
一本の異常もなく、全体として非常にまとまりがある良質の仕上がりでした。若いお酒はフレッシュな香味をしっかりと残し、寝かせたお酒はほどよい熟成感を見せ、甘酸と旨味が調和する仕上がりです。
原酒造では毎年9月に満月のラベルが目印の「純米吟醸秋酒 ひやおろし」を発売しています。このひやおろしに該当する純米吟醸の仕上がりも非常に良好で、爽やかな香りがあり、円熟した旨みも見られました。「ひやおろし」という酒種の持つイメージだけにはとらわれない、原酒造らしさあふれるひやおろしを今年もお届けできることでしょう。
仕込みシーズンの開始も近づいてきました
今年も滞りなく初呑切りを終え、仕込みの開始に向けて準備は万端というところです。
原酒造では新酒の皮切りとして極早稲の飯米「葉月みのり」の日本酒を発売しており、この飯米の収穫時期が8月であるところから、8月の終わりには仕込みに取り掛かります。これは県内でもかなり早い開始となります。
度重なる新型コロナウイルスの流行に歯止めがかからない昨今ですが、幸いなことに原酒造では3年前の流行開始以来、一人の感染者も出すことなく造り期間を乗り越えることが出来ています。
今年も徹底した衛生管理・感染対策のもと、皆さまに美味しいお酒をお届けしていきます。